ファッションディレクター 森岡 弘×バイヤー 鏡 陽介
森岡 弘(左)
もりおか ひろし●ファッションディレクター・スタイリスト。婦人画報社(ハースト婦人画報社)を経てクリエイティブオフィス「グローブ」設立。ファッションを中心に幅広い分野で活躍している。
山口 藍(中)
やまぐち あい●ビジネスクロージング ブロックリーダー。2010年入社。ネクタイや既成シャツ、パターンオーダーシャツの担当を経て、2016年から5階オーダーシャツ担当に(2017年3月時)。
鏡 陽介(右)
かがみ ようすけ●オーダーシャツ バイヤー。ビジネスクロージングのアシスタントバイヤー、バック&ラゲッジのバイヤーを経て現職。ドレスも含め、シャツのほとんどをオーダーメイドし着用。
ビジネスシーンで着るカジュアル顔のシャツ
オーダーシャツというと一般的にはドレスシャツ専門と思いがちだが、メンズ館5階=オーダーシャツではカジュアルシャツも扱っているのをご存じだろうか。既製品が豊富なこの領域で、あえてオーダーをするメリットや楽しみとはなんなのか。ファッションディレクターでありスタイリストの森岡 弘氏をゲストに迎え、三者三様の視点でその魅力を探ってみた。
鏡 5階のオーダーシャツのコーナーでは、サンプルがあるわけではなく、デザインや採寸が限りなくフルオーダーに近いやり方なので、つくろうと思ったらいろいろなことができちゃうんですよ。ただ、カジュアルに見えるかどうかの部分が難しくて、自分たちでも納得できるものができたのが2013年。それがちょうど、製品洗いのシャツが一点からオーダーできるようになったタイミングだったんです。
山口 その前から鹿の子編みのシャツは扱っていましたが、メンズ館5階がビジネスウエア中心のフロアなので、あくまでもタイドアップ用でした。
鏡 製品洗いのシャツは爆発的に売れましたね。ダンガリーなんかはすごく人気がありました。それで次はレトロポロがくるんじゃないかと思って、2月中旬からオーダーを受け付けるようにしたんです。
森岡 長袖でオーダーできるのがいいですよね。半袖の既製品だと、ジャケットの中に着たときに、少し貧相に見えてしまいますからね。
鏡 そうなんですよ。僕もそれが嫌だったんです。
森岡 しかも、袖ボタンも付いていますから、暑いときは、ロールアップすればいいわけですからね。そのほうがこなれて見えるというか、実際に絵になります。
左がイタリア・カンクリーニ社のデニム生地を使ったダンガリーシャツ。製品洗いを施してこなれた感じに仕上げてある。
右はイタリア・モンティ社のニット生地を用いたレトロポロ。プルオーバーだがカフス付きのシャツ袖にすることでドレッシィな印象に。
カンクリーニ社デニム生地使用カジュアルシャツ仕立上 り 27,000円から
レトロニットポロ仕立上り 21,600円から
お渡し:約5週間後
山口 レトロポロだと、イタリアの三大生地メーカーといわれるモンティのニット生地でつくるのをおすすめしています。あとシャツ生地でいうと、イタリアのカンクリーニや英国のトーマスメイソンなどが人気ですね。
森岡 カジュアルでもサイズは重要ですからね。以前はこういったものをオーダーできるところがほとんどなかったのに、今はあるわけですから、どんどん活用すべきだと思いますよ。
山口 オーダーの際は、お気に入りのシャツを着てきていただけると助かります。というのも、同じ細めという要望でも一人ひとりの認識が違うので、好みを知るという意味でもそれが重要になってくるんです。
鏡 実寸とゆとり寸というんですけど、ゆとりがないシャツはスマートに見えない。でも、極限までタイトにしてほしいという要望が結構あるんですよ。本当はカッコよくなりたいのが目標なのに、細く見せるのが目標になってしまっているんですよね。
森岡 オーダーは自分の体型を理解したうえで、どう見せたいか、目的意識を持つことが大切ですよね。あと、カジュアルの場合はどう着たいかも考えないと。
鏡 カジュアルとはいえ、オン・オフでいったらやはりオンなんですよ。オンのカジュアル提案というか。
森岡 カジュアルも人によって解釈が違いますからね。ダンガリーのタブカラーとかピンホールのカラーのオーダーシャツもこれからはいいでしょうね。
布帛のシャツオーダーはこれからの季節、綿麻や麻素材で誂えたい。
オーダーに挑戦する場合は、何をどうしたいか目的意識をもつことが大事、と森岡氏。
山口 ニットや麻素材は縮むので、それを前提で大きく仕上げることをお伝えしています。あと湯通といって、一回水を通してから裁断する方法もあるので、そちらをご提案させていただくことも多いですね。
鏡 ニットについて補足すると、確かに洗うと縮むんですけど、着ていくうちに伸びるんですよ。ニットの採寸って実は凄く難しくて、1年後に袖が長くなったので詰めて下さいというケースもありますよ。
森岡 それもオーダーだからできるということですね。
鏡 うちでオーダーできるカジュアルシャツは大きく分けると3つあって、ひとつめがニットのシャツ。フルオープンもプルオーバーもできて、細かな採寸をするのは、あまり他所ではないことです。ふたつめは、一点からできる製品洗いのオーダーシャツ。3つめが普通のシャツ。これはカジュアルな生地を選んで芯地を含めてカジュアルっぽい仕様にする方法です。実はこれが一番難しくて、自分で想像してこういうシャツをつくりたいと思わない限り、チェックの生地を選んだとしてもカジュアルな顔つきにならないんです。なのでこういう場合は、カジュアルの程度をスタッフとよく話し合うことが必要です。
山口 オーダーの特徴は、同じ生地でのリピーターが多いこと。一度に何枚もオーダーしていく方もいます。
鏡 世の中の傾向として、今はトレンドを追いかけるより、本当に気に入ったもの、自分にフィットしたものを何枚も持ちたい、というのを感じますね。
森岡 トレンドを理解したうえで、自分らしいものを取捨選択する。市場が成熟してきた証なんでしょうね。
*価格はすべて、税込です。
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03-3352-1111(大代表)
メンズ館5階=オーダーシャツ